真桜「ぬにににっ……! あとちょっと……あとちょっと……! 頑張れ、頑張れわたし……!!」

「……上の方の本棚にある本を取りたいみたいだけど……あれはどう見ても危ないだろ」

脚立の一番上に立ってあの体勢じゃ明らかに不安定極まりない。
しかも周りに誰かいたら、あんな体勢じゃスカートの中見えるだろうに。
うちの制服を来てるってことはうちの学院の子みたいだけど、脚立の上であんな風につま先立ちしてたら――

真桜「わっ!? わ、わ、わ……! わぁっ、ちょ、えぇっ!?」

真桜「あ、ちょ、ちょっと……!? こ、ここ、こここれってもしかして……! ぜ、ぜぜ、絶体絶命的なっ……!?」

真桜「ひゃあ!? やっ、とっとととぉっ!? わ、わわわっ、うっわわわわわぁっ……!?」

「ちょ、ちょっと! 危ないっ!!」

思わず書店に駆け込んで脚立に手を掛ける。

「はぁ……はぁ……ぎりぎり間に合ったか……はぁ、良かった……」

真桜「え? あ、もしかしてキミが押さえてくれたのですか? そっか、それで揺れが止まったんだねー!」

真桜「ありがとー! もう少しで脚立から落っこちて、潰れたトマトみたいになっちゃうところだったよー! 本当にありがとなのです!」

「あ、いや。無事だったらそれでいいんですけど……」

真桜「うんうん! この通りわたしは無事も無事! お陰さまでビンビンなのですよー!」

「はぁ、それを言うならピンピンじゃないかと……」

こんな状況にも関わらず、ものすごく人懐っこい子だな……。
って言うか、いくら緊急事態で仕方なかったとは言え、女の子のパンツが目の前にあるのは気まずい。気まずすぎる。
いやむしろこの子は気付いてない……わけないよな、この位置関係で。

真桜「んん? そんなに目を逸らしてどうしたのですか? もしかして対人恐怖症?」

「いえ、全くそういうことではなくてですね」

真桜「大丈夫だよ? わたしは全然人見知りしないのです。そんなに怖がらないでいいからね?」

真桜「さっきみたいに、ササッとカッコ良く助けたりしてくれるのに可愛いーね♪ でもお話する時はちゃんと相手の顔を見ないとだよ?」

「いや怖がってるわけでも人見知りしてるわけでもないんで」

この子、何かテンポが人と違って調子狂うな……これがいわゆる天然さんか。
周りにいないタイプ過ぎていまいちリズムが掴めない。

「あの、とりあえずまた転びそうになる前に降りた方がいいんじゃないかと」

真桜「うん、そうだね。わたしもそれがいいと思うのです。でもまだ欲しい本が取れてないから、ちょっと待ってね?」

「え? ちょっと待っててって?」

※このテキストはギャラリー用に編集をしてあります。