仔虎「……おはよう、カナ」

「……仔虎?」

布団を剥ぐと隣で仔虎が頬を赤く染めながら優しい視線で俺を見つめていた。
女の子特有の甘い香りがふわりと舞って鼻をくすぐって来る。

仔虎「くす……何か改まって挨拶すると恥ずかしいね……? 部屋も明るいし……」

仔虎「……この子の名前、どうしよっか?」

愛おしそうに自分のお腹を撫でながら囁くような甘い声をくすぶらせる。

仔虎「あたしは、あたしたちの子どもが明るく元気にさえ育ってくれれば、それ以上は何も要らないな……」

仔虎「パパの『要』とあたしの『仔虎』から一文字ずつ取って……要仔虎? それとも、仔虎要がいいかな……?」

脳天にチョップ。

仔虎「あいたっ! いきなり乙女の頭にチョップすんなよー! せっかくいい雰囲気だったのにさー!」

「この子の名前って、俺達の名前並べただけじゃねえか。変な名前背負わせて人生ハードモードにすんな」

「しかもわざわざ制服着崩してまで小芝居しなくていい。要仔虎和親条約第5条、言ってみろ」

仔虎「あたし、カナに夜這いをすることを禁ず」

「その条約に照らし合わせた被告の意見は?」

仔虎「すんません。入学式前でテンション上がってました。反省はしてません」

「そこはとりあえず反省しとけ。あと入学式とか関係ないだろ。いつもそうじゃねえか」

仔虎「あ、あと母さんが朝御飯出来るから起こして来いって言ってた」

「もう起きとるわ。しかも本命の用事そっちだろ」

※このテキストはギャラリー用に編集をしてあります。