「どうぞ、ご主人様……その、お召し上がり下さい……」

ふわ、と不意に涼の甘い匂いが届くくらいの距離。
え……これって、その……え? このまま飲めってこと? へ? そういうものなの?
メイド喫茶の常識とか分からないけど、こんな風にメイドさんと一緒に飲み物飲むのか?

「ご主人様……お気に、召しませんでしょうか? もし、ご迷惑でしたら……」

「ああいやごめん、ちょっと驚いただけだから……! 嫌なんてことないから、頂きます……」

混乱しつつも息を飲んで空いているストローに口を付ける。
さっきよりもさらに近い位置に涼の顔があって……やばい、すごいドキドキしてる。

「……ちゃんと、ご主人様のことを見つめ続けないと行けないのに……だめ、恥ずかしくて先輩の顔がまともに見れない……」

「分かるけど……でも、練習ならちゃんとこっち見ないとダメなんだろ?」

「うん、でも……もし、もしもだよ……?」

「先輩が、口に含んだドリンクをこの中に戻してたらと思うと……ドキドキして、心臓が爆発しそうになる……」

「そんなことするか! ってか、そんなこと考えなくていいから!」

バカなことを言う涼を否定するように一気にグラスの中身を吸い上げる。

「……ん、何だこれ、美味い……! 青いから何かと思ったけど、柑橘系の甘さがあって口当たりが爽やかで飲みやすい……」

「私は料理とか出来ないから、今日まで一生懸命練習した甲斐があった。先輩が喜んでくれて、すごく嬉しい」

「そうか。頑張ってくれたんだな」

「うん、頑張った。先輩に飲んでもらうんだから一番良い出来のものを持って来たくて。だからもっと褒めて欲しい」

※このテキストはギャラリー用に編集をしてあります。